この本は、御岳山を観光案内として紹介する本ではない。山にある人の暮らし、祈り、森の時間、足もとの小さな生命までを、ひとつの流れとして感じてもらう写真集として考えている。
森を背景ではなく、この場所の根にあるものとして扱う。人だけ、風景だけ、信仰だけと分けず、山の時間の中で重なっているものとして見せる。説明しすぎず、読者の中で意味が立ち上がる余白を残す。
実践事例 02 / 長期写真作品 / CASE 02 / LONG-TERM PHOTOGRAPHY
写真を並べるのではなく、
読む時間を組む。
この本は、御岳山を観光案内として紹介する本ではない。山にある人の暮らし、祈り、森の時間、足もとの小さな生命までを、ひとつの流れとして感じてもらう写真集として考えている。
森を背景ではなく、この場所の根にあるものとして扱う。人だけ、風景だけ、信仰だけと分けず、山の時間の中で重なっているものとして見せる。説明しすぎず、読者の中で意味が立ち上がる余白を残す。
風が通る。
まだ道は見えないまま、
木立の奥に、
しずけさがひらいている。
その気配に触れるように、
すでに迷い込んでいる。
すぐに情報を与えず、場所の輪郭が定まらない状態から入る。
道、水、苔、湿度の中へ入り、写真を通して身体の位置を移していく。
位置感覚を少し揺らし、「次も同じように読める」という安心を崩す。
森の時間を経たあとに、人の存在をもう一度見る。
伝承や信仰を、情報の説明ではなく、写真の流れの中に現れる気配として置く。
小さな生命へ視線が沈み、本を閉じたあとにも余韻が残るようにする。
THE TITLE CHANGES WITH THE READER
はじめは、山に住む人、働く人、祈る人を指す題名のように見える。けれど本を読み進めるうちに、読者自身が森へ入り、迷い、人と出会い、祈りの気配に触れ、足もとの生命に気づく。閉じたとき、読者もまた「山に生きる人」の側へ静かに移っている。その構造を目指している。
白いページは、読者が呼吸を整えるための時間として置く。表紙の直後に白見開きを置くのは、すぐに情報を始めず、手にした人の気持ちを静かに整えるため。巻末でも白見開きを重ね、読後の余韻を一気に切らない。
写真の大きさだけでなく、写真がない時間もまた、写真集のリズムをつくる。

表紙には写真を載せず、縦書きの題名だけを置く。紙色はオフホワイトから薄いウォームグレー。最終的には浅い空押しを想定し、題名だけが強く固定されすぎない深さを探っている。
本文の写真だけではなく、表紙、見返し、白いページ、束の厚み、手に持ったときの大きさまでを、一冊の読書体験として考える。
写真の選択だけではなく、迷走区間、白いページ、表紙、判型、試作まで。写真集が本として立ち上がる過程を別の記録にまとめています。
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