実践事例 02 / 長期写真作品 / CASE 02 / LONG-TERM PHOTOGRAPHY

写真集
『山に生きる人。』

写真を並べるのではなく、
読む時間を組む。

継続制作中御岳山・写真集
01 / 目的 / PURPOSE

観光案内として、
山を説明しない。

この本は、御岳山を観光案内として紹介する本ではない。山にある人の暮らし、祈り、森の時間、足もとの小さな生命までを、ひとつの流れとして感じてもらう写真集として考えている。

森を背景ではなく、この場所の根にあるものとして扱う。人だけ、風景だけ、信仰だけと分けず、山の時間の中で重なっているものとして見せる。説明しすぎず、読者の中で意味が立ち上がる余白を残す。

冒頭導入文 / OPENING TEXT
風が通る。

まだ道は見えないまま、
木立の奥に、
しずけさがひらいている。

その気配に触れるように、

すでに迷い込んでいる。

読者自身が、
山へ入っていく。

  1. 01 / 入口まだ場所が、はっきりしない。

    すぐに情報を与えず、場所の輪郭が定まらない状態から入る。

  2. 02 / 森の内部へ身体感覚を、森へ移す。

    道、水、苔、湿度の中へ入り、写真を通して身体の位置を移していく。

  3. 03 / 迷走簡単には、抜けない。

    位置感覚を少し揺らし、「次も同じように読める」という安心を崩す。

  4. 04 / 再発見山の中で、人を見つけ直す。

    森の時間を経たあとに、人の存在をもう一度見る。

  5. 05 / 祈りと気配説明ではなく、気配として立つ。

    伝承や信仰を、情報の説明ではなく、写真の流れの中に現れる気配として置く。

  6. 06 / 帰還視線を、足もとへ戻す。

    小さな生命へ視線が沈み、本を閉じたあとにも余韻が残るようにする。

THE TITLE CHANGES WITH THE READER

「山に生きる人。」は、
読むうちに意味が変わる。

はじめは、山に住む人、働く人、祈る人を指す題名のように見える。けれど本を読み進めるうちに、読者自身が森へ入り、迷い、人と出会い、祈りの気配に触れ、足もとの生命に気づく。閉じたとき、読者もまた「山に生きる人」の側へ静かに移っている。その構造を目指している。

03 / 沈黙 / SILENCE

白いページは、
空白ではない。

白いページは、読者が呼吸を整えるための時間として置く。表紙の直後に白見開きを置くのは、すぐに情報を始めず、手にした人の気持ちを静かに整えるため。巻末でも白見開きを重ね、読後の余韻を一気に切らない。

写真の大きさだけでなく、写真がない時間もまた、写真集のリズムをつくる。

写真を載せず、縦書きの『山に生きる人。』を浅く空押しする表紙案
表紙方向性の確認資料。完成入稿データではない。

写真を見る前に、
静けさへ触れる。

表紙には写真を載せず、縦書きの題名だけを置く。紙色はオフホワイトから薄いウォームグレー。最終的には浅い空押しを想定し、題名だけが強く固定されすぎない深さを探っている。

本文の写真だけではなく、表紙、見返し、白いページ、束の厚み、手に持ったときの大きさまでを、一冊の読書体験として考える。

写真についての相談も、
撮る前から。

何を撮るかだけではなく、何を残し、どのような時間として手渡すかから考えます。

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