記録 / 写真集形成 / RECORDS / BOOK FORMATION
『山に生きる人。』が、
本になるまで。
写真を並べるのではなく、
読む時間を組む。
見せたいのは、
御岳山の案内ではない。
出発点は明確だった。この本は、御岳山を観光案内として紹介する本ではない。暮らし、祈り、森の時間、足もとの小さな生命までを、ひとつの流れとして感じてもらう。
森を背景にしない。人、風景、信仰を別々に切らない。説明を増やすのではなく、読者の中で意味が立ち上がる余白を残す。
風が通る。
まだ道は見えないまま、
木立の奥に、
しずけさがひらいている。
その気配に触れるように、
すでに迷い込んでいる。
読む順序を、
身体の移動として考える。
白いページは、
読者の時間。
白いページは、単なる空白ではない。表紙の直後に白見開きを置き、すぐに情報を始めない。巻末でも白い見開きを重ね、読後の余韻を一気に切らない。
見開きという左右二ページの単位をリズムとして扱い、写真がある時間と、写真がない時間を同じ構成の中に置く。

「次も同じように読める」を、
少しだけ崩す。
中盤の一部は「迷走区間」として設計している。毎回きれいに左右交互へ置くのではなく、あえて予測を外す。写真を大きくしたり小さくしたり、左に続けたり右に続けたりする。
変化は多用しない。一部の写真をわずかに傾ける案や、90度回転の見開きを効く場所だけに限定する。目的は技巧を見せることではなく、読者の位置感覚を静かに揺らすことにある。
写真を載せない、
という選択。
表紙には写真を載せない。縦書きの題名「山に生きる人。」だけを置く。紙色はオフホワイトから薄いウォームグレー。細い流線と小さな点を気配として残し、題名は中央より少し右、少し上へ。
最終的には空押しを想定している。インクを使わず、紙や布へ凹凸だけで文字を出す。深く押しすぎず、題名だけが強く固定されない浅さを探る。

大きさは、
先に決めない。
100ページ前後の写真集は、判型によって読み方そのものが変わる。机に置いてじっくり見るのか、手に持って読むのか。写真の余韻、持ちやすさ、価格、束の厚みまでを含めて比較する。

完成を急がず、
実際に読む。
打ち合わせ資料の時点では、100ページ相当・全通し見開きダミーの第2号試作が完成し、表紙案は決定済み。判型比較用の試作PDFも用意されている。
次に必要なのは、紙面上で成立しているかだけではなく、実際に本として持ち、開き、置き、読み終えたときにどう感じるかを確かめること。その確認を経て、紙、加工、判型を定着させていく。
