記録 / 写真集形成 / RECORDS / BOOK FORMATION

『山に生きる人。』が、
本になるまで。

写真を並べるのではなく、
読む時間を組む。

制作会社打ち合わせ用資料をもとに再構成2026.08
01 / 目的 / PURPOSE

見せたいのは、
御岳山の案内ではない。

出発点は明確だった。この本は、御岳山を観光案内として紹介する本ではない。暮らし、祈り、森の時間、足もとの小さな生命までを、ひとつの流れとして感じてもらう。

森を背景にしない。人、風景、信仰を別々に切らない。説明を増やすのではなく、読者の中で意味が立ち上がる余白を残す。

導入文 / OPENING TEXT

風が通る。

まだ道は見えないまま、
木立の奥に、
しずけさがひらいている。

その気配に触れるように、

すでに迷い込んでいる。

02 / 読書体験 / READING EXPERIENCE

読む順序を、
身体の移動として考える。

入口まだ場所がはっきりしない。
森の内部へ道・水・苔・湿度の中へ。
迷走位置感覚を、少し揺らす。
再発見山の中で、人を見つけ直す。
祈りと気配説明ではなく、気配として立つ。
帰還足もとの生命へ、視線を沈める。
03 / 白い余白 / WHITE SPACE

白いページは、
読者の時間。

白いページは、単なる空白ではない。表紙の直後に白見開きを置き、すぐに情報を始めない。巻末でも白い見開きを重ね、読後の余韻を一気に切らない。

見開きという左右二ページの単位をリズムとして扱い、写真がある時間と、写真がない時間を同じ構成の中に置く。

100ページ相当の見開き構成を一覧にした第2号試作のコンタクトシート
第2号試作 全体コンタクトシート。見開きの流れを確認するための制作資料。
04 / 迷走 / DISORIENTATION

「次も同じように読める」を、
少しだけ崩す。

中盤の一部は「迷走区間」として設計している。毎回きれいに左右交互へ置くのではなく、あえて予測を外す。写真を大きくしたり小さくしたり、左に続けたり右に続けたりする。

変化は多用しない。一部の写真をわずかに傾ける案や、90度回転の見開きを効く場所だけに限定する。目的は技巧を見せることではなく、読者の位置感覚を静かに揺らすことにある。

05 / 表紙 / COVER

写真を載せない、
という選択。

表紙には写真を載せない。縦書きの題名「山に生きる人。」だけを置く。紙色はオフホワイトから薄いウォームグレー。細い流線と小さな点を気配として残し、題名は中央より少し右、少し上へ。

最終的には空押しを想定している。インクを使わず、紙や布へ凹凸だけで文字を出す。深く押しすぎず、題名だけが強く固定されない浅さを探る。

写真を使わず縦書きの題名だけを置いた表紙案
表紙方向性の確認資料。完成入稿データではない。
06 / 判型 / FORMAT

大きさは、
先に決めない。

100ページ前後の写真集は、判型によって読み方そのものが変わる。机に置いてじっくり見るのか、手に持って読むのか。写真の余韻、持ちやすさ、価格、束の厚みまでを含めて比較する。

A4特寸240×320mm机に置いて見る迫力。写真の余韻を大きく保つ。
A4210×297mm大きさと扱いやすさの均衡を確認する。
B5182×257mm持ちやすさが増しながら、大きさも残る。
A5148×210mm手に持って読みやすい一方、写真の沈黙が小さくなりすぎないかを見る。
A4特寸、A4、B5、A5で同じ見開きを比較した制作資料
判型比較用の制作資料。A4特寸 / A4 / B5 / A5。
07 / 現在の進行状況 / CURRENT STATUS

完成を急がず、
実際に読む。

打ち合わせ資料の時点では、100ページ相当・全通し見開きダミーの第2号試作が完成し、表紙案は決定済み。判型比較用の試作PDFも用意されている。

次に必要なのは、紙面上で成立しているかだけではなく、実際に本として持ち、開き、置き、読み終えたときにどう感じるかを確かめること。その確認を経て、紙、加工、判型を定着させていく。

静かだが、弱くない本。

大きすぎず、小さすぎず。
読者が山の時間へ入り、
読み終えたあとにも余韻が残る写真集。

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